Kotobano Izumi

英語・多言語学習のコツを一滴、またポトり

コトバの泉
その一滴があなたを変える
(背景画像・ブログデザインは工事中です)
Coming soon!

「文法用語が英語より難しい」英語を学びたい人を直撃する日本語

日本人にとって英語というのは当然外国語なのですが、英語の文法書の中に出てくる日本語が外国語並みに難しいと感じた人は多いはずです。例えば、「名詞、抽象名詞、固有名詞、集合名詞、自動詞、他動詞」などなど挙げていけばきりがないでしょう。これらの用語を聞いて耳に心地よいと感じる人は極少数で、殆どの人は頭が痛くなること間違いなしです。英語も日本語もどちらも同じ「言語」というカテゴリに入るのですが、日本語を習得する上ではこのような言葉は必要なかったはずです。なぜ英語を勉強する時には、頭痛の種とも言えるこれら文法用語が出てくるのでしょうか。

 

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224105545j:plain

名詞的用法・形容詞的用法、文法書はとにかく漢字の羅列が反乱している

英語の文法の勉強がなかなか好きになれないという人の最大の理由は「文法用語が難しすぎて理解できない」ことにあると思います。逆に言えば少しでも文法用語を知れば、その分だけ英語の文法が身近に感じられるのです。この記事では読者の皆さんが、日本語を習得する上で文法用語が必要なかった理由を知り、それが出てきてしまう英語学習でどのように用語に向き合えば良いのか、そしてどのくらい必要なのかという「英文法学習の指針」について解説します。ご自身の身につけたい英語力と照らし合わせて読めば、必要な文法用語はどこまでなのかが明確になることでしょう。

外国語を学ぶ時に文法用語が必要なワケ

国語学習の出発点として、母国語の習得プロセスと外国語のそれは違うのだという認識を持っているかが大切なポイントです。そのため、まずは日本語の場合をちょっと見ていきましょう。

・朝何も食べなかったから、お腹が減っています。
・明日から休みだ。
・社会人として仕事を始めてからが、本当の人生だ。

一見普通の文ですが、日本語を専攻として学んでいる外国人ならこんな風に「から」の使い方を勉強しています。

「から」は接続助詞・格助詞・準体動詞として使う。

私達日本人はこのような文法用語を知りませんが、何も考えずに自然と「から」という言葉が使えます。それは「から」という語を感覚的に100%理解しており、「から」が必要な必要な状況になれば即座に出てくるように頭がプログラムされているからです。そのため、何も接続助詞などといった難解な語を用いなくとも感覚で処理しきれているため、そもそも文法用語は必要ないわけです。対して、日本語を外国語として学んでいる人たちは日本語の感覚がまだ身についておらず、「から」という言葉を我々日本人と同じように使うことができません。この感覚のズレを補うために、上に挙げたような用語を通して、日本人と同じように言葉が使えるように学習しているのです。

したがって、用語を通して外国語を学習する真の目的とは、その言語のネイティブの感覚に到達することだと言えるでしょう。

そういうことから、日本人と同じ感覚で日本語を使えるようになった人は、学習過程でお世話になった用語から無事卒業でき、以後用語を必要としない自由な日本語運用が可能となるのです。

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224110517j:plain

文法用語から卒業した時の開放感。自由に英語を話す時が来た!

用語を知ることで英語はできるようになるか

それならば、ということで「用語を介さないで日本語を身につけれたから、英語も用語を使うことなく感覚で身につければいいんだ」と思うかもしれません。もちろん、それができればそれに越したことはないのですが、現実問題かなり制約がかかってきます。そもそも日本語の場合、「あいうえお」も知らない赤ちゃんの時から膨大な量の日本語を意味も分からず聞き流し、言葉になっていないような言葉でコミュニケーションを取るところから始めたのです。何年もそうしていくうちに徐々に日本語の感覚ができてきて今の日本語力に至っているわけです。毎日の仕事や勉強に追われる日々の中でそのような時間的な贅沢ができたり、何を言っているか分からない赤ちゃんレベルの英語を周りの人全てが許容してくれるのであれば、赤ちゃんが母国語を習得したように英語も身につけられます。

当たり前ですが、年齢が上がるほど上の方法は取れなくなります。その代わりに大人となった私たちは、既に身につけた母国語を適切に頼りにして英語を学んでいきます。それが文法用語なのです。いわば自動車学校のようなもので、最初は標識の名前や自動車の様々な用語を覚えなければなりませんが、免許を取って数年経つ頃にはそのような用語を頭の中で使って考えることなく、感覚だけで車を運転できるようになるものです。このように、英語を学ぶ上での用語は、感覚だけで英語を使えるようになるまで付き添ってくれる教官のようなものだと思えば良いでしょう。

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224105939j:plain

文法用語は感覚的に英語を操れるまで付き添ってくれる教官だ

以上のことを踏まえると、ある文法の用語を知るということはその文法をネイティブスピーカーの感覚までに落とし込む第一歩だと言えます。言い換えれば、用語を知れば知るほど感覚的な運用ができる英文法が増えるということです。その上、赤ちゃんがするような時間のかかる学習過程をスキップできるので効率的だとも言えます。

まずは皆さんが到達したい英語のレベルを決めていただき、そのレベルの文法書にざっと目を通しどんな用語が出てきているかを確認するとが、今後の勉強の指針になることでしょう。

教材大国日本は英語学習に最適な国か

英語を勉強する最高の方法は留学だという考えが広まっているためか、とりあえず海外に行って語学学校に通えば英語力が付くと思われがちです。しかし、実はそうでない場合の人の方が圧倒的多数であるのが現実です。は留学とは実戦であり、今までの学習を実体験を通して感覚レベルまで引き上げる場だということです。そのため、国内での学習が乏しいのに、海外にとりあえず行けば英語が話せるようになると信じている人は、時間やお金ばかりではなく、自信までも失う結果に終わります。そのような方々は、国内で身につけたいレベルまでの英語の学習を一通り済ませておくべきです。その点、優れた英語の教材が多い日本は効率的・効果的な学習の場となるのです。

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224110850j:plain

日頃の勉強の成果を会心の一撃としてネイティブに放つ。それが留学だ。

読者の皆様の中に既に留学が決まっている方は、学習の成果を少しでも現地でモノにできるように、今からでも遅くないので英語の学習に力を注いでおきましょう。

さて、教材大国・日本にいるだけで英語を勉強するにあたり恵まれているという話に入るわけなのですが、日本ほど英文法を懇切丁寧に解説している本を出版している国は無いと言えるでしょう。事実、オーストラリアで教鞭を取っていた時に、色々な国の英文法書を目にする機会がありましたが、どれも質は日本のものに比べたら激しく低い代物ばかりでした。(特に南米系の国の文法書は解説が少なく用法集的なものだった。) 日本の教材の優れている点は、イラスト、特に洗練されたイラストが多く、読むだけで英文法の感覚が掴めるものが多いことです。そればかりではなく、難解な用語を極力避け、平易な表現だけで読者が英語の感覚を掴めるような解説が多いのです。したがって、まだ英語の文法に全く自信がない人ほどそういった入門書に何冊か目を通すことから始めると良いでしょう。

誤解していただきたくないのは、「文法用語は必要ない」とは言っていないことです。用語を積極的に避けて勉強することは、決して効果的ではありません。ある程度の用語は知っておかないと、学習のどこかでつまずいてしまうのです。また日本語を例にして見ていきましょう。

日本語を教えていた時に実際にあった例ですが、ある日本語学習者が以下のように

「と」= 「and」の意味である

と覚えていたとしましょう。

そのため

お母さんとお父さん (mother and father:名詞2つ)

と同じ要領で、

ギターの音はうるさいと迷惑です (loud and annoying:形容詞2つ)

としてしまうのです。

感覚では「の」は2つの言葉をつなぐ時に使えるというのを理解はしているようです。しかし、「の」は2つの名詞をつなぐ時には使えるが、形容詞をつなぐ時には使えない
ということを理解していなかったため、この間違いが発生したのです。

このように、「自分が理解している日本語の感覚」と「正しい日本語の感覚」の間にズレがある時、間違いが起こります。そのため、用語を学ぶということはどういう時に自分の感覚が正しく、どういう時にその感覚が通用しないかを知る手がかりになります。言い換えれば、文法用語を知るということは、文法感覚を磨く研ぎ石を手に入れるようなものなのです。

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224112236j:plain

文法用語は英語感覚をより尖らせる研ぎ石とも言える

したがって英語の勉強では、日本の優れた教材を使用し感覚から文法に入って、文法用語でその確認をする、というのが教材大国・日本における文法力強化法でしょう。

ただ、一口に文法用語と言っても、名詞・形容詞といった基本的なものから、斜格・可逆動詞などといった超上級語まで幅広く存在します。まず、よほど難解な文法書を選ばない限り、超上級用語は出てこないのでそういったものは覚えなくとも良いでしょう。一般的に中学校レベルの文法用語を知っておくだけで、文法の本はかなり分かるようになります。目安として、中学英語の参考書の目次に出てくるような用語だけ押さえておけばよい、ということが言えるでしょう。数はあまり多くなく、その用語達に目を向ける手間さえ惜しまなければ、むしろ後々英語の勉強が楽になるのです。

例えば英文法に、「どんなものがあって、どういう時に、どんな風に使えるか」を整理することができます。

裏を返せば、「どういうものが、どういう時に、どんな風に使えないか」というNGなタイミングを知ることができます。そのおかげで、例外的な状況にも段々と対応できるようになり、表現の幅が広がります。

他にもう一点、中学レベルの文法用語は最低限知っておきたい理由があります。
それは、初級の文法の学習を終えて文法が中級レベルになり、更に上を目指したくなった時、上級英語の勉強段階への橋渡しができるようになる点です。いくら教材大国日本といえども、感覚理解を推し進めている教材はまだまだ初級・中級・中上級の教材に限られており、上級のものは数少ないのです。そのため、感覚理解中心で中上級まで学習を進めいざ上級英語の扉を開こうとすると、難しいのは英語ではなく、教材の中の文法用語(日本語)だという場合が極めて多いのです。つまり、中上級教材から上級教材への橋渡しができるように、最低限中学レベルの用語を知っておかないといけないのです。

もちろん、学習の度合いが進むにつれて、用語の理解も深めていくのが一番の理想ですが、学習の面白みを損なわないためにも、中学英語以上の用語は後回しでも何とかなるケースが多いです。

f:id:Kotodama_Langtaro:20180224113103j:plain

最低限の用語を知っていれば旅を楽しめる

このように、中学英語の文法用語を知っておくことで得られるメリットは大きい、という理解を常に念頭に置いておくと良いでしょう。

最後に

いかがでしょうか。これまで頭を悩ませる存在でしかなかった文法用語が、実はそれほど忌み嫌う対象ではないのだという見方に変わったでしょうか。感覚と用語。一見対立しているように見えるこの二者は、互いに助け合う関係にあるのです。そのため、学習上どちらが欠けても不自由です。

日本では英語を身につけることの重要性が近年ますます叫ばれていますが、筆者は「英語よりもまず母国語」であると思っています。それが意味しているのは、確かな英語力は母国語の揺るぎない基盤の上に成り立つということです。英語の文法用語を1つ知る度に、日本語と英語の対比が生まれます。したがって文法用語は、英語を透視するレンズであるだけではなく、日本語をより深く知る顕微鏡のレンズでもあるのです。文法用語の理解を通して母国語力の強化に繋がれば、それに応じて英語での表現力も上がるものです。このような、母国語との兼ね合いも常に念頭に置いて英語を学習されると、一段と大きな成果が期待できるでしょう。